■ほぼひと月ぶりの更新となってしまいました。一旦リセットして本日より読書日記を再開したいと思います。

■1月28日。ポール・オースター「わがタイプライターの物語」(新潮社)を読了。オースターが1974年に出会い、以来四半世紀以上ものあいだ愛用しているというタイプライターについて語る画文集。タイプライターに一目で恋をしたという画家、サム・メッサーによる絵画がとてもいい。対象への愛情に満ちた文章と絵によって、無機物であるはずのタイプライターにも生命がやどり、実に豊かな表情を見せる。何度でもページを繰りたくなるような美しい小品。

■現在読んでいるのは、宮沢章夫「レンダリングタワー」(アスキー)。雑誌「MACPOWER」の連載エッセイ「ノート〜コンピュータとMacにまつわる思考の変遷」の書籍化。劇作家・演出家にして「牛乳の作法」など爆笑エッセイの作者(大ファンです。全部読んでます)が、PowerbookやiPodなどのMac製品をはじめ、Apple Storeやサポートセンターに至るまで、Mac周辺のあれこれを縦横無尽に思索する。「MACPOWER」と言えば結構専門性が高く、どちらかというと硬い印象を持つ雑誌だが、だからといって安心するのは禁物だ。淡々とした語り口でいきなりの爆笑を生む破壊力は、これまでの作品以上にすさまじい。電車の中や仕事場で読むのは大変危険であるという点を、経験者として念のためご注意しておきたいと思います(笑)。

■そしてもう一冊同時進行が「バースデイ・ストーリーズ 村上春樹翻訳ライブラリー」村上春樹・編訳(中央公論新社)。誕生日をテーマにした12の海外短編に、春樹氏自身による書き下ろし短編「バースデイ・ガール」を収録。「バースデイ・ガール」は、氏の名作短編「プールサイド」や「雨やどり」でも用いられた聞き語りの手法が光る、実に不思議で魅力的な一遍でした。他の作品も誕生日だからこそ浮き彫りにされる人生の哀しみや切なさを描いたものが多く、胸にせまるものばかり。Recommended!

■1月28日。ポール・オースター「わがタイプライターの物語」(新潮社)を読了。オースターが1974年に出会い、以来四半世紀以上ものあいだ愛用しているというタイプライターについて語る画文集。タイプライターに一目で恋をしたという画家、サム・メッサーによる絵画がとてもいい。対象への愛情に満ちた文章と絵によって、無機物であるはずのタイプライターにも生命がやどり、実に豊かな表情を見せる。何度でもページを繰りたくなるような美しい小品。
■現在読んでいるのは、宮沢章夫「レンダリングタワー」(アスキー)。雑誌「MACPOWER」の連載エッセイ「ノート〜コンピュータとMacにまつわる思考の変遷」の書籍化。劇作家・演出家にして「牛乳の作法」など爆笑エッセイの作者(大ファンです。全部読んでます)が、PowerbookやiPodなどのMac製品をはじめ、Apple Storeやサポートセンターに至るまで、Mac周辺のあれこれを縦横無尽に思索する。「MACPOWER」と言えば結構専門性が高く、どちらかというと硬い印象を持つ雑誌だが、だからといって安心するのは禁物だ。淡々とした語り口でいきなりの爆笑を生む破壊力は、これまでの作品以上にすさまじい。電車の中や仕事場で読むのは大変危険であるという点を、経験者として念のためご注意しておきたいと思います(笑)。
■そしてもう一冊同時進行が「バースデイ・ストーリーズ 村上春樹翻訳ライブラリー」村上春樹・編訳(中央公論新社)。誕生日をテーマにした12の海外短編に、春樹氏自身による書き下ろし短編「バースデイ・ガール」を収録。「バースデイ・ガール」は、氏の名作短編「プールサイド」や「雨やどり」でも用いられた聞き語りの手法が光る、実に不思議で魅力的な一遍でした。他の作品も誕生日だからこそ浮き彫りにされる人生の哀しみや切なさを描いたものが多く、胸にせまるものばかり。Recommended!
あけましておめでとうございます。2006年も充実した読書生活を送りたいと思います。早速ですが年末年始の読書日記を。
■「冷たい銃声」ロバート・B・パーカー(早川書房)は昨年末12/29に読了。普段は脇役であるホークにスポットを当て、その心理的側面にも深く迫った奥行きのある作品だった。ずっしりとした手ごたえに大満足。スペンサーとも次の冬までしばしのお別れだ。

■年明け。ブルーノ・シュルツ「シュルツ全小説」(平凡社ライブラリー)に着手。冒頭を飾る短編「八月」を読む。もともとは美術を志し、版画集(本のジャケットの版画(ガラス陰画)も自身の作品)なども遺しているシュルツの小説は、それ自体が細密な絵画の様だ。鮮やかな色彩感、匂い、熱、音、時に痛みさえも・・・五感に強く訴える耽美的・幻想的なシュルツの文章に、しばし時を忘れた。『広場に面した石造りの建物の二階にある暗い住まいには、毎日、大きな夏全体が斜めに通り抜けていった。細かに震える空気の層の静寂、床に映って熱い夢を夢見る数個の矩形の眩い光、真昼の金の鉱脈の奥底から掘り出された手回しオルガンの旋律・・・・・・どこかで弾くピアノの絶えず初めからやり直す繰り返しの二つ三つの小節が、白い歩道の陽光に失神しては、昼なかの火焔の中へ迷い去る。』思わず書き写してしまいましたが、いいなあ、こういうの!一つ一つの文章がもはや詩ですね。工藤幸雄さんの丁寧で美しい翻訳にも感謝です。
■ブルーノ・シュルツ(1892-1942)はポーランド生まれのユダヤ人。ナチスの銃弾に斃れるまでに遺した、『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』の両短編集から洩れた四篇を加えた全三十二作品を収録した本作。じっくりと楽しみたいと思います。
■ところで僕は、今を去ること5年前、2001年にも読書日記のホーム・ページをおよそ一年間に渡って営んでいました。その1/2〜1/3分を、戯れにちょっと再録してみます。
○2001年1月2日(火)
冬になるとアニー・ディラードを読みたくなるのは、やはり数年前の冬に初めて読んだ彼女の「本を書く」の印象が、いまだに強く心に残っているせいだろうか。それともその研ぎ澄まされた文体が、どこか冬を思わせるせいだろうか。今日読んだのは「石に話すことを教える」。1975年度のピューリッツァー賞を受賞した「ティンカー・クラークのほとりで」と同系統の、14篇からなるネイチャー・エッセイ。スピリチュアルで臨場感溢れる自然描写にしばし現実を忘れ、密林の奥深くへ、生命の神秘に満ちた島へ、導かれるままに旅は巡る。今日はその他に、加藤周一「読書術」を読了。初出はなんと1962年というから驚きだが、その明快な読書論は時の風化作用に十分に堪え得るものであり、古めかしさをあまり感じさせない。さらに昨年末から少しずつ読んでいる、岡田雅勝「人と思想・ウィトゲンシュタイン」を読んで就寝。
○2001年1月3日(水)
近所のコーヒーショップへ。この店は年末年始にも営業しているのでありがたい。世の正月気分を横目に、一人静かにコーヒーを飲むのも悪くないものだ。「ウィトゲンシュタイン」を読了。真理を見出すことに魂を注ぎ続け、苦悩と共に生きたこの哲学者の純粋さに惹かれ、昨年は彼の著書や評伝を数多く買い集めた。今日読んだこの本は、今後彼の思想を学んでいく上での下地として大きく役立ってくれることだろう。コーヒーをおかわりして大江健三郎「新年の挨拶」を途中まで読み、店を出てぶらぶらと駒沢公園まで歩く。たくさんの凧が空を舞っている。噴水の前のベンチで、夭逝の天才画家、佐伯祐三の小さな画集を眺める。大胆なタッチの中にも限りない繊細さがうかがえ、一見すると日本人の絵とは思えぬ洗練された色使いと構図が実に素晴らしい。夜は椎名誠「黄金時代」を一気に読了。行き場の無い苛立ちに満ちた青春が、この作者ならではのまなざしで鮮やかに描かれている。なぜか枕元に転がっていた、ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男」を読んで就寝。イギリスらしいユーモア。
■文中のコーヒーショップも今は潰れてしまいました。あの頃は今よりも真面目に本を読んでいたのだなあ。アニー・ディラード、また読み返してみよう。
■「冷たい銃声」ロバート・B・パーカー(早川書房)は昨年末12/29に読了。普段は脇役であるホークにスポットを当て、その心理的側面にも深く迫った奥行きのある作品だった。ずっしりとした手ごたえに大満足。スペンサーとも次の冬までしばしのお別れだ。
■年明け。ブルーノ・シュルツ「シュルツ全小説」(平凡社ライブラリー)に着手。冒頭を飾る短編「八月」を読む。もともとは美術を志し、版画集(本のジャケットの版画(ガラス陰画)も自身の作品)なども遺しているシュルツの小説は、それ自体が細密な絵画の様だ。鮮やかな色彩感、匂い、熱、音、時に痛みさえも・・・五感に強く訴える耽美的・幻想的なシュルツの文章に、しばし時を忘れた。『広場に面した石造りの建物の二階にある暗い住まいには、毎日、大きな夏全体が斜めに通り抜けていった。細かに震える空気の層の静寂、床に映って熱い夢を夢見る数個の矩形の眩い光、真昼の金の鉱脈の奥底から掘り出された手回しオルガンの旋律・・・・・・どこかで弾くピアノの絶えず初めからやり直す繰り返しの二つ三つの小節が、白い歩道の陽光に失神しては、昼なかの火焔の中へ迷い去る。』思わず書き写してしまいましたが、いいなあ、こういうの!一つ一つの文章がもはや詩ですね。工藤幸雄さんの丁寧で美しい翻訳にも感謝です。
■ブルーノ・シュルツ(1892-1942)はポーランド生まれのユダヤ人。ナチスの銃弾に斃れるまでに遺した、『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』の両短編集から洩れた四篇を加えた全三十二作品を収録した本作。じっくりと楽しみたいと思います。
■ところで僕は、今を去ること5年前、2001年にも読書日記のホーム・ページをおよそ一年間に渡って営んでいました。その1/2〜1/3分を、戯れにちょっと再録してみます。
○2001年1月2日(火)
冬になるとアニー・ディラードを読みたくなるのは、やはり数年前の冬に初めて読んだ彼女の「本を書く」の印象が、いまだに強く心に残っているせいだろうか。それともその研ぎ澄まされた文体が、どこか冬を思わせるせいだろうか。今日読んだのは「石に話すことを教える」。1975年度のピューリッツァー賞を受賞した「ティンカー・クラークのほとりで」と同系統の、14篇からなるネイチャー・エッセイ。スピリチュアルで臨場感溢れる自然描写にしばし現実を忘れ、密林の奥深くへ、生命の神秘に満ちた島へ、導かれるままに旅は巡る。今日はその他に、加藤周一「読書術」を読了。初出はなんと1962年というから驚きだが、その明快な読書論は時の風化作用に十分に堪え得るものであり、古めかしさをあまり感じさせない。さらに昨年末から少しずつ読んでいる、岡田雅勝「人と思想・ウィトゲンシュタイン」を読んで就寝。
○2001年1月3日(水)
近所のコーヒーショップへ。この店は年末年始にも営業しているのでありがたい。世の正月気分を横目に、一人静かにコーヒーを飲むのも悪くないものだ。「ウィトゲンシュタイン」を読了。真理を見出すことに魂を注ぎ続け、苦悩と共に生きたこの哲学者の純粋さに惹かれ、昨年は彼の著書や評伝を数多く買い集めた。今日読んだこの本は、今後彼の思想を学んでいく上での下地として大きく役立ってくれることだろう。コーヒーをおかわりして大江健三郎「新年の挨拶」を途中まで読み、店を出てぶらぶらと駒沢公園まで歩く。たくさんの凧が空を舞っている。噴水の前のベンチで、夭逝の天才画家、佐伯祐三の小さな画集を眺める。大胆なタッチの中にも限りない繊細さがうかがえ、一見すると日本人の絵とは思えぬ洗練された色使いと構図が実に素晴らしい。夜は椎名誠「黄金時代」を一気に読了。行き場の無い苛立ちに満ちた青春が、この作者ならではのまなざしで鮮やかに描かれている。なぜか枕元に転がっていた、ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男」を読んで就寝。イギリスらしいユーモア。
■文中のコーヒーショップも今は潰れてしまいました。あの頃は今よりも真面目に本を読んでいたのだなあ。アニー・ディラード、また読み返してみよう。
すっかりサボってしまった読書日記をまとめて。
■小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)を読了。80分しか記憶を保つことができない数学博士と、博士の家政婦を務めることになった「わたし」、その息子ルートとの心温まる交流の日々。読み終えてみると、作中での数式の扱いや構成などフォーカスが若干甘い印象も受けたが、淡い陰影のある文章も含めておおいに楽しめた。本作は、寺尾聰、深津絵里らで映画化され、来春1月21日よりに公開が予定されている。
■村上春樹「意味がなければスイングはない」(文藝春秋)を読了。僕はいつも本の「あとがき」を読むのをかなり楽しみにしている。本編とはまた違って、肩の力を抜いた親しみのこもった文章が作者との距離を縮めてくれるし、時にはその作品が生まれた背景なども知ることができて、作品にさらなる奥行きと立体感を与えてくれるものだ。今回の春樹氏の「あとがき」もそんな楽しさに満ちており、大きな満足と共に最後のページを閉じた。本編の感想については、これまでの日記をご覧ください。
■秋口から少しずつ読んでいた「細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING」(平凡社ライブラリー)をようやく読了。はっぴいえんど、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)、キャラメル・ママなど、日本の音楽シーンにおける最重要バンドの中心人物である細野氏のロング・インタビュー。むしろ語りによる半自叙伝と言っても差し支えないだろう。YMOの結成秘話や精神世界への傾倒など、興味深い話題の数々が、細野氏のあの独特の声を伴ってページから湧き上がってくる。氏の作品群をもう一度改めて聴きなおしてみたい、そんな気持ちに強くさせられる一冊だった。

■今は「冷たい銃声」ロバート・B・パーカー(早川書房)を読んでいるところ。このパーカーの「探偵スペンサー」シリーズは、僕がかれこれ20年近くも親しんでいるシリーズで、最近は毎年一年に一度、この時期になると新作の翻訳が書店に並ぶ。だからこれはもう僕にとって冬の風物詩のひとつでもあり、大きな冬の楽しみのひとつになっている。大事に取っておいて冬休みに入ったらゆっくり読もうと思いながら、その前につい我慢できず読んでしまうのも毎年のこと。主人公のスペンサーは非常に人間らしいところのある探偵なので、共に悩みながら人生を歩んできた古い親友のような、そんな気持ちで僕は彼を見ているところがあるかも知れない。今作は冒頭から、スペンサーの盟友にして不滅の男・ホークが深い傷を負っているという(ファンにとっては)ショッキングなシーンから始まる。菊地光による生き生きと小気味良いテンポの翻訳もいつもながらに、今後のストーリー展開が大いに楽しみだ。

■その他、「江口寿史の正直日記」江口寿史(河出書房新社)、「侵入社員」ジョセフ・フィンダー(新潮文庫)、「SEのフシギな生態」きたみりゅうじ(幻冬舎文庫)などを中心に(軽い本ばっかりですね)色々と平行して読んでいます。
■小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)を読了。80分しか記憶を保つことができない数学博士と、博士の家政婦を務めることになった「わたし」、その息子ルートとの心温まる交流の日々。読み終えてみると、作中での数式の扱いや構成などフォーカスが若干甘い印象も受けたが、淡い陰影のある文章も含めておおいに楽しめた。本作は、寺尾聰、深津絵里らで映画化され、来春1月21日よりに公開が予定されている。
■村上春樹「意味がなければスイングはない」(文藝春秋)を読了。僕はいつも本の「あとがき」を読むのをかなり楽しみにしている。本編とはまた違って、肩の力を抜いた親しみのこもった文章が作者との距離を縮めてくれるし、時にはその作品が生まれた背景なども知ることができて、作品にさらなる奥行きと立体感を与えてくれるものだ。今回の春樹氏の「あとがき」もそんな楽しさに満ちており、大きな満足と共に最後のページを閉じた。本編の感想については、これまでの日記をご覧ください。
■秋口から少しずつ読んでいた「細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING」(平凡社ライブラリー)をようやく読了。はっぴいえんど、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)、キャラメル・ママなど、日本の音楽シーンにおける最重要バンドの中心人物である細野氏のロング・インタビュー。むしろ語りによる半自叙伝と言っても差し支えないだろう。YMOの結成秘話や精神世界への傾倒など、興味深い話題の数々が、細野氏のあの独特の声を伴ってページから湧き上がってくる。氏の作品群をもう一度改めて聴きなおしてみたい、そんな気持ちに強くさせられる一冊だった。
■今は「冷たい銃声」ロバート・B・パーカー(早川書房)を読んでいるところ。このパーカーの「探偵スペンサー」シリーズは、僕がかれこれ20年近くも親しんでいるシリーズで、最近は毎年一年に一度、この時期になると新作の翻訳が書店に並ぶ。だからこれはもう僕にとって冬の風物詩のひとつでもあり、大きな冬の楽しみのひとつになっている。大事に取っておいて冬休みに入ったらゆっくり読もうと思いながら、その前につい我慢できず読んでしまうのも毎年のこと。主人公のスペンサーは非常に人間らしいところのある探偵なので、共に悩みながら人生を歩んできた古い親友のような、そんな気持ちで僕は彼を見ているところがあるかも知れない。今作は冒頭から、スペンサーの盟友にして不滅の男・ホークが深い傷を負っているという(ファンにとっては)ショッキングなシーンから始まる。菊地光による生き生きと小気味良いテンポの翻訳もいつもながらに、今後のストーリー展開が大いに楽しみだ。
■その他、「江口寿史の正直日記」江口寿史(河出書房新社)、「侵入社員」ジョセフ・フィンダー(新潮文庫)、「SEのフシギな生態」きたみりゅうじ(幻冬舎文庫)などを中心に(軽い本ばっかりですね)色々と平行して読んでいます。

